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必然か偶然か、日本と韓国双方が時期を同じくして「牛の口蹄疫感染」で非常事態、畜産関係者に衝撃。

 宮崎県で2000年3月25日、口蹄疫(こうていえき)感染の肥育牛が発見され、全国の畜産関係者に衝撃が走っているが、お隣の韓国でも同日、口蹄疫にかかった乳牛が発見されて15頭を屠殺。また、続いて27日には農家6世帯の牛90匹を感染の懸念により畜舎の近くの現場で屠殺して埋葬するなど、必然か偶然か、日本と韓国双方が時期を同じくして「口蹄疫感染」で非常事態になり、緊張が高まった。

 口蹄疫は、すべての家畜の疾病の中で最も恐れられている猛烈な伝染病で、牛、豚、羊など偶蹄(ぐうてい)類のひづめや口に病変を起こし、死亡率も高い。症状としては、ひづめや口に水泡が出来て高熱が出る。これに感染すると、豚の約60%、牛の約10%が発病して死亡する、といわれている。

 97年に台湾で流行した際には18万頭の豚が発症して死亡、385万頭の豚と1000頭の牛が処分された。ただし人には感染せず、感染した肉を食べても人体への影響はないが、口蹄疫のウイルスは人に付いて移動するため、人を牛、豚に近付けないことが予防の第一とされている。

 日本では明治末期以降発生がなく、現代日本には存在しない病気と考えられていた。
 しかし、2000年3月25日、農水省が宮崎市の畜産農家で肥育されている牛のなかに口蹄疫の疑似患畜1頭を確認したと発表。この畜産農家は10頭を飼育しており、確認された1頭以外にも症状が出始めていた。

 家畜伝染病予防法によって農水省は発生農場から半径20キロを汚染地域、50キロ以内を警戒地域に指定し、警戒区域からの牛、豚の移動を禁止。宮崎、鹿児島両県は3月26日、家畜市場の閉鎖を決めた。

 一方、韓国では、京畿(キョンギ)道坡州(パジュ)での家畜移動や牛乳、飼料車の移動を禁止。牛、豚12万頭あまりを肉眼調査すると共に、採血サンプルを利用した疫学調査もはじめた。
 また韓国では、飼料について調べたところ、この地域の農家で使われている飼料の一部が中国から輸入されたものであることが判明。中国では99年6月に一部の地域で口蹄疫が発生し、中国中南部とチベット地域に拡散したこともあり、農家が、検査や検疫を受けていない価格の安い中国産の「麦わら」「稲わら」飼料を使用して、感染したとの見方が強まっている。

 この中国産の「麦わら」「稲わら」、実は日本へも入っており、中国からの稲わら輸入は、昨年秋、大連市に蒸気による殺菌設備が完成して輸入が解禁されたばかり。
 日本の畜産現場では、肉牛の飼料として欠かせない麦(稲)わらのなかでも特に中国産は、価格も安く、しかも繊維が固くて糖分が多いなど、肉牛の飼料としては質が高いと有望視されはじめていた矢先のことでもある。

 必然か偶然か、今回の口蹄疫感染騒動の元凶がこの中国産の「麦わら」にある、とは断定できないものの、韓国と時期を同じくして発生したことなどから、麦わら飼料に対する厳重な警戒もこの際、必要のようだ。

 ちなみに口蹄疫は牛の場合、潜伏期間は2〜14日。最大の特徴は感染の速さで、一般的な対策としては感染の可能性がある地域内の偶蹄類をすべて殺す処置が取られている。

 宮崎県県内ではこれまでに19頭の感染を確認しているが、4月10日までに新たに口蹄疫の疑いがある肉牛16頭が発見、処分されている。

●その後●
 家畜伝染病予防法により農水省は、発生農場から半径20キロを汚染地域、50キロ以内を警戒地域に指定して、警戒区域からの牛、豚の移動や搬出を禁止、家畜市場も閉鎖していたが、検査の結果、これ以上の感染の拡大はないとみて、50キロ圏内の移動および搬出制限を2000年4月23日から解除、発生農場から半径20キロの汚染地域を半径10キロ圏内に縮小。この移動制限も5月2日に解除、個別農場の最終検査が終了する2000年5月中旬に「安全宣言」が出された。

 また農水省は2000年4月27日、宮崎、鹿児島、熊本各県の子牛市場で、子牛1頭当たりの価格が下落した場合の助成など、総額約100億円を対策費にあてることも決めた。
 飼料用の輸入麦わら稲わらが感染源となった可能性もあるため、国産の稲わらを緊急に確保するための助成措置や家畜の移動制限などで出荷ができなかった農家に対する低利融資、3県の農協や経済連に対しての助成金交付も行なう。

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東京地検、元農水省構造改善局域振興課課長補佐を収賄罪で起訴。

 東京地検は2000年3月22日、農業構造改善事業をめぐる職員の過剰接待疑惑で処分され、「収賄」の容疑で逮捕された元農水省構造改善局域振興課課長補佐を、収賄罪で起訴した。

 調べによると、元課長補佐は1995年4月から96年3月まで、農水省構造改善局就業改善課(現・地域振興課)の中山間地域活性化推進室課長補佐として財団法人「ふるさと情報センター」などの職務に従事、1997年に香川県の農協(四国大川農協)が東京都渋谷区にある「ふるさと情報センター」が管理運営する県産品ショップ「ふるさとプラザ東京」に「讃岐うどん」を出品するのに便宜を図り、その見返りに農協の組合長から少なくとも現金約50万円を受け取ったほか、銀座のクラブなどでの飲食代を農協側につけ回し、農協側は傘下の協同組合名義で飲食店に数年間で約200回、総額約1000万円を振り込んでいた、とされる。
 農協組合長らについては、贈賄罪の時効(3年)が既に成立している。

 同農協は96〜97年の東京、大阪両ふるさとプラザへの出店で、農水省構造改善局から中山間地域活性化推進事業の補助金約1000万円を受けていた。

 これまで農水省は、業者による過剰接待問題で内部調査を行ない、構造改善局の職員18人を停職や減給処分にしているが、それではおさまらずに一連の過剰接待問題は、「汚職」という刑事事件にまで発展した。

 中央官庁に対して家宅捜索が行なわれたのは、東京地検特捜部が98年秋に防衛庁背任事件での捜索以来のこと。農水省が捜索を受けたのは20年ぶりで、構造改善局は初めてだった。

 農水省の調査では、元課長補佐は96年11月と97年2月の2回、香川県の四国大川農協幹部や農協傘下の協同組合幹部らと2泊3日の韓国旅行に同行したほか、8回のゴルフ接待を受けていたことが判明している。同省は、関係業者からの接待を禁じる倫理規程を設けたが、元課長補佐は、それにもかかわらず無届けで接待を受け、2カ月の停職処分になり、1月12日付けで依願退職していた。

 農相は、「農水省の調査が十分行き届かなかった。公務員の倫理が問われる中、こ のような事態が起きたことは、誠に遺憾で残念に思う」と、同省が調査委員会を設置して昨年から今年にかけて行なってきた調査が不十分であったことを認めたが、次々に発覚する官僚の不祥事はとどまることを知らず、これらの醜聞は、まさに「氷山の一角」で、農水省内部にはまだまだウミがありそうだ。

●これまでに判っている農水省構造改善局がらみの事件
 農水省構造改善局が管轄し、その天下り先にもなっている財団法人農林漁業体験協会という団体が、1993年から6年間にわたり、構造改善局が行なう国庫補助事業の「コンサルタント業務」について、市町村から業務委託を受けたあと、その団体に群がる民間業者(伊藤忠商事系列のコンサルタント会社など)にそれを「丸投げ」し、約7億円超えの収益をあげていたことも発覚している。

 同団体に関しては、構造改善局職員との「会食」や「海外旅行」などで、その癒着が農水省内でも問題になり、醜態を表面化させた責任から「職員の中で過剰接待等を受けた者は、自己申告するように」と、異例の通達が出され、職員18人に対して、減給や訓告などの処分にも至った。減給6カ月1人。同3カ月1人。同2カ月2人。同1カ月1人。訓告4人。厳重注意5人。口頭注意4人。上司にあたる管理職13人については監督責任で給与の1割を自主的に国庫に返納することも要請した。

 構造改善局がらみでの補助事業の「コンサルタント業務」では、6年間に同団体は722件を受託し、684件を伊藤忠商事系列のコンサルタント会社「ファームイン」に丸投げしていた。

 丸投げされた会社は、投げてくれた団体を過剰接待するほか、農水族議員に献金。団体は、農水族議員の力を借りながらその補助事業を優先的に回してくれる構造改善局職員を過剰接待するという「蜜月を守るための古くさい定番」を日々繰り返していた。

●天下りの一例も判明
 
農水省構造改善局の一連の疑惑で、癒着の温床のなかで「官・民・団体」ぐるみでの「補助金確保」のための組織づくりが、着々と進められていることが浮き彫りになっているが、衆院の疑惑解明プロジェクトに提出された農水省の資料によると、構造改善局が所管する公益法人32団体(財団法人13、社団法人19)のうち、同局職員が常勤役員に天下っている団体は23団体にのぼることが判明している。このうち補助金を受給している17団体には、これまで64人が常勤役員として天下り、17人が現職ということも明らかになっている。中には事務次官経験者も2人、常勤役員に天下っている。

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山形県の庄内経済連、農協合併が進まず、全農(全国農業協同組合連合会)に統合。

 2000年度末での解散を決め、庄内1農協の実現を目指していた山形県酒田市の庄内経済連は、組織改編について方針を大転換、全農(全国農業協同組合連合会)に合併統合する方針を決めた。

 庄内地方には、庄内みどり、庄内たがわの合併2農協と、鶴岡市、余目町、酒田市袖浦の未合併3農協があり、これまで5農協による「庄内経済連組織整備研究会」で合併のタイムスケジュールの協議が行なわれていた。そして、99年度中に広域2農協を実現し、その後に包括継承する1農協を目指す方針を示していた。
 しかし、昨年4月に余目町農協が2農協に向けた合併協議に加わらないことを表明。この段階で庄内1農協の実現が現実的には無理になった。

 2000年度末での解散を決めていた庄内経済連は調整を進めていたが、このほど1農協への包括継承を断念、受け皿を失なう形となり、全農への統合を決めた。近く、正式に表明する。

 解散する庄内経済連の事業や資産は全農に引き継がれる。

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遺伝子組み換え食品の国際的安全基準を策定するコーデックス委員会「バイオテクノロジー応用食品特別部会」の初会合、本格的議論は次回に持ち越し。

 遺伝子組み換え食品(GM食品)の国際的な安全基準を策定するためコーデックス委員会(食品規格委員会)は「バイオテクノロジー応用食品特別部会」の初会合を、千葉の幕張メッセで2000年3月14日から4日間の日程で実施。今後、2つの作業グループを設置し、年1回開かれる部会に報告をしながら草案をまとめ、2003年のコーデックス委員会総会で基準を最終決定する方針を確認した。

 同委員会は、食品に関して貿易の公正と安全性を確保するために国際的な食品規格を作る目的でFAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)が1962年に合同で設立。現在、165カ国が加盟している。

 初会合の討議では、これからの議論の枠組を検討する入り口の議論が中心となった。
 36カ国と24の国際機関やNGO(非政府組織)の代表約400人も参加。主に、2003年までの基準策定に向けて、どのような食品やバイオ技術を優先的に議論対象にするかなどについてや、安全基準を作る上での原則、消費者への情報公開などについて意見を出し合った。

 アメリカなど遺伝子組み換え食品の輸出国は、「遺伝子組み換え食品の安全性は実証されている」として、「安全基準に基づく審査は既存の食品と変わらずに、限られた場合にだけ行なうべきだ」と主張。EU(欧州連合)は「科学的に未解明の部分が多くあることから、慎重な対応が必要で安全基準に基づく審査は必要だ」と主張し、デンマークなどは「安全性への疑いが否定できない場合は、商品化を認めない」とする意見を提出。これに対してアメリカなどは「遺伝子組み換え食品だけを特別扱いすることには断固反対する」との意見を提出するなど、議論は平行線をたどった。
 議長を務める日本は、「安全性に関する情報公開の促進や遺伝子やアレルギー原因物質についての国際的なデータベースづくり」などを提案。 

 同部会は今後、「一般原則」について検討する作業グループと「分析手法」を検討する作業グループの2つを設置し、年1回開かれる部会に報告をしながら草案をまとめる。
 「一般原則」の議長国は日本で、「分析手法」の議長国はドイツ。第2回会合は2001年3月に日本で行なわれる。

※ニュースハイライトバックナンバーには「迷走の遺伝子組み換え食品表示問題、一歩前進?」の記事があります。
※有機農産物表示についての動向は「有機農産物の国際基準と改正JAS法と有機JASマーク表示」の記事を参照のこと。

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米の減反(生産調整)に応じない農家は「疎外」、応じた農家にはごほうびを謹呈の町が。

 青森県金木町は、2000年度から米の減反(生産調整)に応じない農家を「町の各種団体の仲間には入れない」「町の補助で実施する先進農業地の視察などには参加させない」など、徹底的に「疎外」する一方、減反に応じた農家には、ごほうびとして商品券を支給する、という方針を打ち出した。
 金木町の町長が、2000年3月10日の町議会での一般質問で明らかにしたもの。

 それによると、減反に応じない農家を疎外する一方、減反を100%達成した農家には10アール当たり2000円の商品券を謹呈、早ければ4月中にも支給する、としている。商品券の使用範囲は町内だけで総額は約1000万円。農家によっては最高で18万円以上が支給される所もある、とか。

 調べによると、金木町には減反拒否の農家が約30戸(減反未達成面積約10・5ヘクタール)あり、町は100%の減反達成率を確保するために、これまで地区間調整をして町全体としての減反目標を達成してきた。

 地区間調整とは、割り当てられた減反面積の未達成分を他の地区に肩代わりしてもらい、その見返り分の金額を未達成地区が支払うというもので、通常は未達成の農家が負担する。しかし、金木町では未達成地区の農家協力が得られず、町が総額244万7500円(10アール当たり2万5000円)を町費から拠出した。

 他の市や町や村では、市町村費を投入して、市町村間調整で減反を達成するところもあるが、金木町では「地区間調整にこれからも町費を出すのも嫌だし、ましてや市町村間調整でさらに町費を出すようになるのは、もっと嫌。さらに嫌なのは町の指示に従わない農家がいること」ということで、地区間調整費総額244万7500円よりも商品券総額約1000万円の出費の方が増しても、減反に応じない農家を疎外するという今回の方針を決めた模様だ。

 新食糧法では「作る自由」と「売る自由」がうたわれた。しかし、農業現場の現実は、売る自由は若干あるものの、作ることにおいての「不自由」さには一層の磨きがかかっている。
 それに加えて古くからある「目の前にカネをぶらさげて、食いつかせて従わせる」という手法は、その健在ぶりをさらに誇示し、究極の絡め手として堂々と市民権を得はじめているようだ。

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厚生省が緊急調査、スイスで「環境ホルモン」が検出されたアメリカ産牛肉、日本にも上陸。

 内分泌かく乱物質「環境ホルモン」の代表的な物質・DES(ジエチルスチルベストロール/合成女性ホルモン剤)が、スイスに輸出されたアメリカ産の牛肉から検出されたが、この牛肉が日本にも入っている可能性が高いことが分かり、事態を重く見た厚生省は緊急調査を始めた。

 DESは「流産防止」のホルモン剤として世界中で妊婦に投与されたほか、畜産の世界でも成長ホルモン剤として大量に使用されていた。しかし、DESを服用した母親から生まれた子どもに乳がんや精子の減少などが生じるなど、生殖障害が発生したことから1970年代にはホルモン剤として使用することは法的に禁止された。

 しかし、これを使用して輸出した牛肉加工業者がおり、スイス政府は1999年7月、アメリカ産の牛肉26検体のうち2検体からDESを検出したとアメリカ政府に通告。
 この事実を知ったアメリカ国内の市民団体CSPI(公益科学センター)が今年1月末、アメリカ農務省に「DESに汚染された牛肉は国内でも流通している可能性があり、追跡調査をすべきだ」との要請書を提出し、カンザス州とイリノイ州の2つの牛肉加工業者がこれを使用して輸出していた事が判明した。

 これを受けて厚生省の乳肉衛生課で調査したところ、この2業者が日本にも輸出していることが判った。厚生省では、この業者から日本に輸入された牛肉2検体を確保し、DESの有無について調べている。また、市民団体も市販の輸入牛肉を独自に調べ始めた。

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野菜の輸入量、依然として増加傾向。

 農業政策のなかでいま、自給率向上が掲げられているが、大蔵省が2000年2月25日に発表した2000年1月の貿易統計によると、生鮮野菜の輸入量が前年よりも24%増えて7万6400トンになるなど、農産物輸入にはさらに拍車がかかっていることが浮き彫りになった。

 野菜は、国内相場が安値で推移している「葉もの」は輸入量が減少したが、ネギやシイタケなどは輸入依存がほぼ定着、ネギは前年より44%増え、生シイタケは前年より30%増えた。
 また、作柄不良などで在庫が少ないタマネギは、2万6500トンと約4倍近く増えた。

 野菜の輸入量は毎年、増加傾向にあるが、果実も前年より39%増えて12万6300トン、食肉では豚肉が約50%増えて5万6000トンにのぼるなど、依然として農産物全般での輸入依存傾向は強まっている。

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「緑のオーナー制度」での立ち木、一般競争入札で「元本割れ」の次は「不成立」。

 「国有林を育てよう」との呼びかけで、林野庁が一般公募で1口50万円の出資を募り、伐採時の収益を契約者と国が分け合う「緑のオーナー制度」(オーナー募集は1999年度から中止)での植林分の一般競争入札が実施されているが、2000年2月22日に行なわれた鹿児島県屋久町(屋久島)の入札(オーナー14人、17口)では、予定価格を大幅に下回ったために入札そのものが成立しないという事態になった。

 2000年2月10日に福島県富岡町で行なわれた初入札では、還元額が出資額を少し上回ったが、2月14日に福島県いわき市の林野庁磐城森林管理署で行なわれた入札では、オーナーに対する還元額は出資額を下回る約45万4000円となり、「元本割れ」という厳しい結果になっていた。
 今回は、それよりもさらに厳しく「入札不成立」という結果になった。

 前回の「元本割れ」という状況について林野庁では「契約時に元本割れの可能性を説明しているほか、緑づくりという視点から契約した人もたくさんいるから、この結果に対しては理解が得られるものと思う」としていたが、「不成立」という今回の状況に対しては理解が得られるはずもなく、「入札参加者らと個別協議し、売却を目指す」としている。

 「緑のオーナー制度」は1984年度にスタートし、1999年度までに契約者は全国で8万5000人(2万5000ヘクタール)に上っている。今年から19カ所が満期を迎え、今回はその3回目の入札だった。

 木材市況が厳しい中で「元本割れ」の可能性が高いことが懸念されていたが、「不成立」の事態は予想されておらず、今回の結果は、今後の入札に大きな不安を残すことになった。

「緑のオーナー制度」
 「緑のオーナー制度」は主に1口50万円で集めた資金を杉やヒノキの下刈りや間伐などの費用に充て、立ち木を売った収益を契約者と林野庁で分け合う仕組み。元本の保証はないもののスタート当時は、話題性もあったことから大人気。しかし、当時から「国有林野の目先の収入を上げようとする策。将来に不安を残す」との声も多かった。
 最近では、林野庁は森林行政の基本方針を伐採・販売中心から災害防止など公的機能重視に変更しており、国有林面積約760万ヘクタールに占める伐採対象地の割合が、従来の5割から2割に大幅削減されて適地が見つけにくくなっていた。また、それに加え、木材価格の低迷で契約者の受取額が払込額を下回る可能性もあるため、制度の継続は困難との判断から1999年度に中止された。

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農地法改正案、株式会社の農地取得を認める方針。

 自民党農林関係合同部会は2000年2月16日、農水省が国会に提出する予定の「農地法」などの改正案を了承した。

 この改正案によると、これまで難色を示していた株式会社の農地取得も、要件を緩和して「株式譲渡を制限した株式会社」においては可能だとした。また、農地権利移動許可の要件になっていた下限面積(北海道2ヘクタール、都府県50アール)については、都道府県が独自の面積を定める場合においても農水大臣の承認は不要とする他、2ヘクタール以下の農地権利移動許可事務を都道府県の自治事務とした。

 バブリーな時代は「農地が投機の対象になって、農業の世界が荒れる」として、企業の農地取得は、あくまでも「ノー」というのが主流だった。しかし、企業経済の世界が冷え込んでいる今、「どこの誰が農地を前向きに取得しようというのだ」「企業が農地取得に動くのは希だ」という認識があるのか、「株式会社の農地取得はけしからん」とする意見は、声にもならない状態のようだ。

すでに実施されている農地の宅地転用
 
「優良田園住宅の建設の促進に関する法律」が1998(平成10)年4月17日に公布され、7月15日に施行されている。
 優良田園住宅とは、農山村地域、都市の近郊その他の良好な自然的環境を形成している地域に所在する一戸建ての住宅で、優良田園住宅の建設に際しては、市町村が主体的に取り組むことになっている。
 住宅を建設しようとする者が、市町村の優良田園住宅建設の促進に関する基本方針に沿って優良田園住宅建設計画を市町村へ提出。そうすると、市町村が優良田園住宅建設計画の認定作業を行なう。認定に当たって都道府県知事と協議。2ヘクタール以上の農地を含む場合等は農水相との協議が義務付けられている。

 住宅建設する場合は、「あらかじめ、無秩序な開発の防止、住宅敷地の良好な保全・管理や農業の健全な発展との調和等を定める基本方針に照らして審査される」という原則のため、認定を受けた優良田園住宅建設のための都市計画法の開発許可、農振法の農用地区域除外及び農地法の転用許可については、市街化調整区域については、地区計画が定まっていない場合などは認定が受けられない場合もあるが、おおむね手続の円滑化等の配慮がされる。
 また、「優良田園住宅」を名目にした建設事業は、事業手法についての制限はないので、土地区画整理事業など他の事業手法を用いて住宅建設を行なうことができる。

 いわば、資本力のある企業が「優良田園住宅建設構想」を掲げて市町村に計画を提示し、市町村の合意を得れば「別荘開発」も事実上可能ということ。

 優良田園住宅の建設に当たっては、2戸目の住宅取得に対する公庫融資(すまいひろがり融資)も利用できる。 地方公共団体が地域特性を踏まえて作成した住宅マスタープランに合致した住宅(木造住宅振興型など)なら、住宅金融公庫の融資額が加算(500万円/戸等)される。認定を受けた優良田園住宅のための宅地開発については、居住環境の良好な住宅地の造成に対する公庫融資が有利な条件で利用できる。 住宅に対する固定資産税の減額措置(当初3年間2分の1等) 不動産取得税の特例措置(住宅について1200万円控除等)の適用対象になる。
地域優良分譲住宅制度、地域活性化分譲住宅制度の対象として民間事業者を追加して、地方公共団体の利子補給と公庫融資の融資率の優遇が受けられる。

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輸入鶏肉を「国産」と偽って販売する「不当表示販売」が横行。

 「遺伝子組み換え」「有機」「国産」等々、農産品や加工食品の世界では、表示を課す気運が高まっているが、一方では、依然として流通や小売の世界での「不当表示」が氾濫するなど、表示の曖昧さや偽表示問題などの解決策は実質的には見当たらないようだ。

 特にいま、輸入鶏肉を「国産」と偽って販売する「不当表示販売」が横行。日本食鳥協会はこれまでも口頭で注意をしてきたが、不当表示が悪質化が一向に改まらないことから、「これ以上進むと完全に消費者からの信頼を失う」として、食肉公正取引協議会に報告し、対策を強めることにした模様だ。

 国産鶏肉は年間約120〜130万トン程度流通しており、輸入鶏肉は約50〜60万トンだが、「食鶏小売規格」で小売店が輸入肉を売る場合、原産国(地)や冷凍品・解凍品などの表示義務付けがあるにもかかわらず、「輸入鶏肉表示すると売れない」との小売側の判断で、「生鮮中国産鶏肉」を「生鮮国産鶏肉」と表示して販売するほか、「アメリカ産冷凍鶏肉」を「生鮮国産鶏肉」と表示して販売したり、「アメリカ国産冷凍骨付きのもも肉」を「生鮮国産若どり骨付きのもも肉」などと表示して販売。そのほとんどが「国産表示」に化けているという。また、国産表示せずとも原産国表示なし、冷凍品・解凍品の表示なしが小売店舗の80%以上を占める地域もあるという。(2000年)

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食品アレルギーに悩む人が増えているのに対応して、アレルギー原因物質を含む原材料名表示を加工食品で義務化。

 食品アレルギーに悩む人が増えているのに対応して厚生省は、加工食品にアレルギー原因物質を含む原材料名の表示を義務付ける方針を決めた。卵、牛乳、ソバなどのアレルギー原因物質を含む食品を食べた人、特に乳幼児などが、含有量が微量でも、呼吸困難などの重い症状を引き起こす例も相次いでいることから、消費者に情報提供する必要があると判断。食品衛生法の省令を改正し、2001年4月からの施行を目指す。

 今後、表示義務を課すのは、アレルギー物質が入っているかどうか判断しにくい容器に入ったものやラップで包装されたすべての加工食品。
 表示の対象となる原材料は、「アレルギー物質が含まれていることが明確な原材料」「血圧低下や呼吸困難、意識障害などの重い健康被害がある原材料」「国内で年に1回以上の健康被害が発生している原材料」で、ソバ、小麦、米、エビ、カニ、イカ、サバ、鶏卵、牛乳、ミカン、クルミ、大豆など、少なくとも20種類余りになる見通し。
(2000年)

●さらに詳しい記事は「農・食・医INDEXの食のコーナー」のニューストピックスにあります。

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遺伝子組み換え作物、「種子」に関してのみ「輸入拒否権」を認める国際取引ルールが誕生。

 遺伝子組み換え作物に関する国際取引ルールが議論されていた「生物多様性条約特別締約国会合」で、2000年1月末、遺伝子組み換え作物の「種子」に関してのみ、輸入国が、それを輸出しようとする国に対して「輸入拒否権」が行使できるという内容の「バイオ安全議定書」が採択された。

 EUなどは「食用、加工用、飼料用を問わず、すべての遺伝子組み換え作物そのものに対して輸入拒否できる」ようにすることを主張したが、アメリカなど遺伝子組み換え作物の輸出国の猛反対で、「遺伝子組み換え作物の種子」に関してのみ、「輸入拒否権」が行使できるという内容に落ち着いた。

 拒否権を行使する際には「輸出国に通知をして同意を得る」という「事前同意」が必要だが、この議定は、WTOなど他の貿易協定には従属せず、独自に有効性をもつ、というもの。

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アメリカで遺伝子組み換え作物の作付面積が、大幅に減少する見込みに。

 2000年のアメリカでの遺伝子組み換え作物の作付面積が、前年に比べ少なくとも約20%程度は減少する見通しになった。

 輸出先の日本や欧州で遺伝子組み換え作物への反発が強まると共に、遺伝子組み換えトウモロコシのBtコーンの生態系への悪影響が各国の研究グループから指摘されていることから、アメリカ環境保護局が規制策を講じたのに加えて、生産農家が需要拡大が見込める非組み換え作物への転換を進めることから、今春の作付けで少なくともトウモロコシが25%、大豆が15%程度減る見込みになった。

 アメリカ環境保護局は、モンサントなど遺伝子組み換え作物の種子会社に対し、行政命令として規制を通告すると共に、生産地に対しても、チョウの幼虫を保護するために「綿花」の生産地には非組み換えトウモロコシの作付け面積を50%以上にするように指導する。

殺虫成分を作る細菌「Bt菌」の遺伝子を組み込んだトウモロコシ「Btコーン」 
 北米を中心に栽培されている殺虫成分を作る細菌「Bt菌」の遺伝子を組み込んだトウモロコシ「Btコーン」は、害虫以外の生物には影響はなく、葉や花粉などに含まれる毒素で害虫が死ぬため、農薬を減らすことができるとされていたが、「益虫であるチョウにも有害」とアメリカの科学者が研究発表したのがきっかけで波紋が広がった。

 その後、新たに殺虫性のたんぱく質毒素の遺伝子を組み込んだトウモロコシ「Btコーン」の根からこの殺虫成分が土壌に染み出し、毒素が根近くの土壌に残留して200日以上殺虫性を維持するなど、広く生態系への影響が懸念されるという問題点も指摘された。

 欧州委員会はすでに「遺伝子組み換え作物の葉を食べたチョウの幼虫が死亡した」などの事例が確認されたため、アメリカ「パイオニア・ハイブリッド・インタナショナル社」の遺伝子組み換えトウモロコシの輸入承認手続きを凍結している。また、オーストリアも、バイオ大手企業「モンサント」が開発した遺伝子組み換えトウモロコシのオーストリア国内での栽培を禁止し、スイスの薬品大手「ノバルティス」の遺伝子組み換えトウモロコシの輸入も禁止している。

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農水省とJA全中、米の減反に向けて水田での麦、大豆、飼料用作物の転作強化推進に動きだす。

 農水省および全国農協中央会は1999年12月17日、農水省内で全国水田農業推進会議を開催し、米の生産調整(減反)をより推進するための営農方針として、麦、大豆、飼料用作物の転作を「水田農業振興計画」として策定し、今後5年間にわたって強化実施することを決めた。

 農水省は主に、これを推進するための誘導に必要な補助金を2000年からの予算として、まず単年度で、水田経営確立対策名目で1438億円、稲作経営安定対策名目で927億円、麦作経営安定資金名目で797億円、大豆生産者団体等交付金名目で156億円を確保して準備を整えつつある。
 JA全中は、全国都道府県単位および市町村単位のJAに、農水省からの補助金確保と引き換えに、米の減反に向けて水田での麦、大豆、飼料用作物の転作強化を今後、要請する。

 主な補助金(助成金)誘導としては、米の減反実施や農地の利用集積を実施する地域には、基盤整備や機械・施設への助成を集中的に行なうというもので、変化する時代にあっても「目のまえに助成金というカネをぶらさげて、食いつかせて従わせる」という旧態依然とした定番的な施策手段には大きな変化はないようだ。

 ちなみに2000年度の農林水産関係予算は総額3兆4200億円。うち、関心が持たれている中山間地への直接所得補償に関連する予算は、特定農山村以外の地域でも市長村長が直接所得補償の対象を指定できるとした「特認制度」に対して大蔵省が、「要件があいまい」として農水省の概算要求額より約44億円低い286億円を大蔵原案として示していたが、復活折衝で回避、約90万ヘクタール分の330億円全額が確保された。
 これにより、中山間地への直接所得補償に関連する事業費は都道府県および市町村の負担分をあわせると700億円規模になる。

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